7章

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千鶴の不安を読み取ったのか、辰之介は千鶴の薄い肩を叩いた。 「大丈夫だって、ここにいるだいたいの奴らは、最初はよそ者だ。俺だってそう。……郭町ってのは結局のところ、弱い者とかはみ出し者の集まりだからな。同じような境遇の奴は気にして、優しくしてくれる人が多いよ。他の街はどうか知らねえが」 そのとき、追いかけっこをしているらしい子供が三人、犬の子のようにまろびながら駆けてきた。彼らはそのきらきらした目で辰之介を見つけた途端に方向転換し、吹き飛ばしかねない勢いで辰之介に飛びついた。 「辰にい!」 辰之介の両腕に一人ずつ、右足に一人。年の頃は皆八つくらいだろうか、菫より少し大きく見える。紙風船のように軽いとはいかないだろうその子らに抱きつかれて、辰之介の後ろにいた千鶴は思わず飛び退いたし、当の辰之介は倒れそうになるほどよろけていた。 「お前ら! 急に飛びかかってくるのはやめろって、言っただ、ろ!」 辰之介が両腕を上げると、ぶら下がる形になった子供たちはきゃっきゃと喜ぶ。右足にくっついていた子がおれもおれもとせがむので、その子が掴まったまま足をぐるんと回してやると、ぎゃーっと心配になるような声をあげて笑っていた。     
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