7章

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しまった、と思った。よく考えればわかることだ。律も、桜花街に捨てられた子や売られた子を助けていると言っていた。ここはきっと、捨てられた子がしっかりと育つための長屋なのだ。 彼らの心を傷つけてしまった。千鶴の胸がきゅうと痛む。 「ごめんなさい……」 噛みしめるように謝罪を絞り出したが、なんだか気まずい空気は拭えない。 千鶴がおろおろしていると、辰之介が静寂を破った。 「千鶴も、親にひどい目に合わされてたんだ。だから俺がここに連れてきた。皆仲良くしてやってくれよ」 その言葉に、子供たちは口々になあんだそうだったのかと言い始め、足元に寄ってきて千鶴も大変だったねえと達観した口をきく子も現れる。千鶴がその子にお礼を言って頭を撫でてやると、嬉しそうに鼻を鳴らしていた。 「ここは捨てられた奴だけが住んでる長屋だ。桜花街の住人が少しずつ金を出し合ったり、飯を作ってやったりして世話してる」 辰之介と千鶴は、子供たちに手を引かれるままに長屋の一室に入った。そこはどうやらいくつかの部屋の壁を抜いたもののようで、外見よりも広々とした空間が広がっている。畳の上にはいくつかの机と、作りかけと見える団扇の骨や油紙の束、そしてその間を縫うように、竹とんぼや木彫りの子馬、独楽などの玩具がそこらじゅうに散らばっていた。 「これね、わたしたちで作ってるの」     
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