7章

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五歳くらいのおかっぱ頭の少女が、できあがった団扇を見せてくれた。竹の骨には茶色の丈夫な紙が貼られ、少し扇いでみたがしっかりしたつくりだ。 その子がたどたどしく説明するのを聞くことには、古くなったり破れたりした団扇を桜花街の妓楼から集め、直して駄賃を貰うらしい。不要といわれた団扇の骨は大事に取っておき、時折手に入る、綺麗な模様いりの紙を貼り直して売ることもあるそうだ。 すごい。自分よりも幼い子供だけで、こんなことができるのか。赤く光る団扇をまじまじと見ながら、千鶴はため息が漏れそうなくらいに感心した。 「お前もゆくゆくは仕事を探さなきゃなんねえだろうし、手始めにこいつらを手伝ってみたらどうだ?」 辰之介の言葉に、佐月と名乗った年長の少年は頭を振った。 「そんな、申し訳ないよ。気にしないでね千鶴さん」 眉を下げてそう言う佐月の手を、千鶴はぱっと取る。 「ううん、おれ、やりたいな。やり方を教えてくれないか?」 辰之介の言うとおり仕事の手習いということもあるし、子供たちが職人のような営みをしていることへの素直な尊敬の念もある。しかし、何かを作ってみたいという、幼い好奇心のほうが大きかった。千鶴の願いに、佐月は明るい顔になった。 「じゃあ、ぜひ! お願いします」     
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