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その光はまるで律自身から溢れているように見えて、千鶴は息を呑んだ。
美しい。朝に見た無防備な姿もあれだけ麗しかったのに、着飾るともはや隙がないくらいだ。
ぼうっとなって見惚れていると、律が人だかりから飛び出ている千鶴の姿を認め、微笑みかけた。細められた雨空の瞳があまりに蠱惑的で、千鶴はますます赤くなる。
(色っぽいのに、きれい)
いやらしい色みがないのは、律の気性の高潔さからだろうか。
ふと気づくと、辰之介の足元から子供たちがずるいずるいと千鶴に不満をたれていた。辰之介に言っておろしてもらうと、千鶴のいなくなったところに皆我先にと登ろうとして、辰之介は大慌てだった。
見物客は皆鼻を伸ばして、律の虜になっている。律はますます綺麗になったな、あれだけ美しくても驕らないし困っている者には手を差し伸べる、桜花街は良い倡妓を得た。口々にそう言う。
揚屋へ向かう律を見送りながら、千鶴の中には、美しいものを見てしまった感嘆と、そして暗雲のような、もやもやした気持ちが織り交ざって沈殿していた。
襟巻は、外に出れば危険に晒され、差別を受けることもある。しかし律は、襟巻という性質を自らの魅力として、街の者から愛されている。
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