2章

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これはお前のためだ。理由は、もう少しお前が大きくなってから、ここに入らずとも良くなったときに説明するから、今は黙って、言うとおりにしていなさい。 それからは、毎月熱を出す頃になると蔵に閉じ込められるようになった。始めこそ嫌がっていたが、それほど熱が高いわけではないはずなのに、それが始まれば抵抗する気力も起きないほどに弱る。しかもこの熱は水などで冷やしても収まるものではなく、薬も効かない。ただぐずぐずと寝込んで、時が過ぎるのを待つほかなかった。 また、熱を出した日までは、千鶴は親の羽振りの良さを武器にして、近所の子供の中で幅を利かせていたのに、それ以降はほとんど自由に外へ出してもらえなくなった。たまの外出にも、店の奉公人が着いてきてすぐに帰るよう促し、満足に楽しませてはもらえない。自然と、家族と店の者以外とは疎遠になった。 元々好奇心旺盛なたちであるから、何度も付き人を撒こうと企んで時折は成功するが、すると町中を大人数で探し回られるので結局すぐに見つかってしまう。次第に、抜け出すことは諦めるようになった。     
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