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紫苑
10000人入る大きなホール、満員の観客がステージの真ん中でピンスポットを浴びる彼をみていた。8年前では考えられないほどの景色を今、彼は目にしているのだろう。ピアノの前に座った彼は、いつものように深く深呼吸をした。
「僕は作曲がやはり好きで、いつもどこでも作っているんですけど、ある日、すーっと生まれたんです。って、かなりカッコつけてますね。なんの詰まりも迷いもなく、スラスラって、メロディーや歌詞が浮かび上がって、ハマっていったんです。それは、なんか、ジグソーパズルのように、ピースとピースがうまくハマっていくような、そんな感覚です。この曲は、僕がみなさんに1番聞いてほしい、届けたい曲です。聞いてください、虹」
彼は深呼吸をして、鍵盤の上に指を静かに置いた。優しいピアノのメロディーが流れた。彼のピアノの音は私に雨を思い出させる。
「やっぱり天宮くんは雨がよく似合う」
私は心の中でつぶやき、彼の曲を聴きながら、目を瞑った。
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