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「ちなみにこれは個人的な質問ですけど、僕みたいな人ってどうですか?」
「えっ?」「あっ??」言葉が重なり合った。私は彼にどうぞと手を向けた。
「分かりにくくてすみません。社会人として働いてる方からみて、僕みたいな生業としている人ってどう映りますか?」
告白されたのかと勘違いして、思わず下を向いてしまった。赤面をどうにかごまかそうと、深く深呼吸して、顔をあげる。たぶんもう顔は赤くないはずだ。
「素直にとても羨ましいです。ただ身を削ってアイディアと才能と運と努力で生きるのは大変そうで、今の私にはできませんね。でも、生まれ変わったらミュージシャンになってみたいかもしれません。誰かの心にとまる、自分にしかできないことができるって素敵ですよね」
「なるほど、ありがとうございます。あとLIVEで何か聞きたい曲とかありますか?」
「そうですね。いつも最後に歌う曲。あれは歌ってほしいですね」
「いつかお好きだとおっしゃってましたね。僕は、音の響きが好きなんですよ。綺麗じゃないですか。でも恥ずかしい話、実物見たことないんです」
私は失礼にも本人を目の前にして笑ってしまった。
「そんなにおかしいですか?」
「いいえ。不快に思ったらごめんなさい。ただの思い出し笑いです。昔同じことを言われたもので。花言葉の意味を知ってますか?」
「わかりません」
「知らずにつけたんですか?」
また笑ってしまった。
「花言葉は、遠方にある人を想うです。ほら桜の近くに咲いてる紫色の花見えますか?あれです。季節外れに咲いてるあの花です」
「あれですか。やっぱり名前と一緒で綺麗ですね」
あはははと彼は笑って、目があった。彼の耳が赤くなっていくのが見えた。私は顔がまた赤くなるのを感じて、思わず桜に目を向けた。
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