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それから半年以上経ったある日、彼がワンマンLIVEをすることになった。私は自分のことのように喜んだ。急いでチケットを予約して、その時を心待ちにしていた。カレンダーでLIVEが近づくたびに1人でカウントダウンをするくらい、楽しみだった。
前日は何故かなかなか寝れなくて、当日はそわそわ早めに家を出発して、チケットを握りしめて、寒空の下、1人で開場を待った。雪もチラつく寒さで、指先が痛い。「早く来すぎてしまった」心の中でつぶやいて、はにかんでしまう。外で待つ客は数人。でもきっとここにいる人は、みんな彼の活躍を祈り続けた人たちだ。
開場後、3列目中央くらいに陣取った。開演までの時間がすごく長く感じた。私は何もしないのにドキドキが止まらなくなった。また彼に会える。それだけで嬉しくて仕方なかった。ただ観客は半分くらいで、ワンマンを祝福できそうにない人数だった。それでも彼はいつものように深く深呼吸をして、いつものようにお辞儀をして、演奏を始めた。相変わらず音が色付いて、キラキラしていた。
「夢だったワンマンが実現できてとても嬉しいです。それも今日来てくださった皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。最後まで楽しんでいってください」
夢の時間はあっという間だった。彼も観客も笑顔で、彼の音楽がその場の全てを包み込んだ。相変わらず、鼻の奥がツンとするけど、今日は涙は流れなかった。
LIVEが終わった後はいつもそわそわして、余韻を求めてしまう。彼の音楽を聴きながら、あてもなく歩きたくなった。私は無意識にあのカフェに来ていた。
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