紫苑

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鳴り止まない拍手の音で、私は音楽を聴いていたことを思い出した。自然と頬をつたった涙に自分自身が驚いた。周囲にばれないように急いで手で拭い取った。鼻の奥がツンと痛い。きっと今、私の目と鼻は真っ赤だろう。幸いにもここは暗いし、周りはステージに立つ彼に夢中で私のことなど気にはしない。彼は客席に向かって、その場に立って深くお辞儀をした。それでも拍手が鳴りやまないので、彼は右へ左へ移動して、それぞれ深々とお辞儀をした。私の涙は彼だけにはバレていたかもしれない。何故だかふと目があったような気がしたからだ。「不意打ちだなあ」と私は心の中でつぶやいた。     
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