心は乳児にも動物にもあるのです

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 赤子は泣く。薄暗い部屋の中で。  赤子は泣く。大人達が談笑する中で。  赤子は泣く。暑さの中で苦しんで。  赤子は泣く。体の痛みに耐えかねて。  赤子は泣く。欲しても与えられぬ愛の為。  泣くしか出来ない、その赤子。されど、泣けども泣けども、誰からも愛は注がれない。  降りかかる言葉は暴言ばかり。怯える赤子は更に泣き、暴言もまた酷くなる。  終わらぬ音に耐えかねた、誰かが舌を鳴らすまで、その連鎖は止まらない。声の連鎖は止まらない。  それでも赤子は泣くしかなく、泣いては声を罵倒され。不潔のままに放置され。  しかし、乳だけは与えられ。出てしまうからと与えられ。  飲みきれなくても罵倒され、飲むのが下手でも罵倒され。歯が生え始めれば、その歯のせいで罵倒され。  それでも生き抜くその赤子。生命力とは残酷だ。生き抜くことは残酷だ。  愛を知らぬそのままに、育ってしまえば苦は続く。愛を知らない、それ故に、他者を愛する力なし。  愛せぬことはひたすら苦しく。愛せぬことは不幸を呼ぶ。  されど現実は残酷で、生き続けることが求められる。幸福より不幸が何倍も起きるとしても。
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