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言葉を覚えた幼児だったが、その言葉に反応する者は居なかった。大人は大人同士で話すばかり、何処へも行けぬ幼児は一人寂しく苦しみ続けるしか出来なかった。
気まぐれに与えられる物は使い古しで、服さえも新しいものを持ってはいなかった。初めての新品は幼稚園に通う為に必要なもので、誰からも譲られないからこその新品であった。
哀れな幼児は、園でも大人に愛を求めた。しかし、一人を優遇する大人はおらず、可愛がられるのはそれまでそうされて育った子供ばかりだった。
愛された子供の肌は柔らかだ。
愛された子供の髪は綺麗だ。
愛された子供の心は強い。
愛された子供は疑うことをしない。
愛された子供は純粋に他者と繋がる。
愛された子供は目が綺麗だ。
疎まれた子供の肌に張りはない。
疎まれた子供の髪は乱れている。
疎まれた子供の心は歪みだす。
疎まれた子供は疑うことしか出来ない。
疎まれた子供は利益を考え他者に近付く。
疎まれた子供は目が濁る。
そうして、そうして、だからこそ、大人達は愛された子ばかりを可愛がり、そうでない子との差は広がる。それが、愛されぬ子を更に追い詰めることになろうとも。
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