第9章:最後の晩餐

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食べ終わった後、俺は母にぶどうジュースを勧めながら、ビデオカメラをテレビにつないだ。 テレビに、俺が掃除のバイトを始めて一年たったお祝いに、母が連れて行ってくれた植物園が映し出される。 「ああー、○○植物園かい、懐かしいねえ。そういやこの時、ビデオカメラを奮発して買ったんだったね」 「そうだよ、俺が働けるようになったお祝いにって、母ちゃんが買ってくれたんだよ。その後、二人で出かけた先をいろいろ撮ったりしたけど、最近は全然使ってなかったね」 「このチューリップ畑は綺麗だったねえ」 「母ちゃんは、花に囲まれて写真を撮るのが好きだからね」 「私もたけしも若いねえ。この時はよかったねえ……」 「今だって、母ちゃんまだまだ若いよ」 「もう母ちゃんだめなんだよ。最近、気持ちがしゃんとしなくて、自分が何していたのか分からないことばかりで。自分が何かしでかしてやいないかって、すごく不安なんだよ」 「大丈夫だよ。しっかりしてるよ。今はちょっと疲れてるだけだよ」 「この時は、たけしに何があっても『母ちゃんだけはたけしの味方だよ』って言ってやれたのに。今はもう、頭がぼんやりしていることが多くて、お前の味方どころか、お荷物だよね……」
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