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第6章:非正規雇用は、正社員のための見せしめ
掃除のバイトを2年ほど続け、2006年、俺は28歳になった。
就職氷河期は2005年で終わり、2006年は売り手市場へと変化していたが、俺は既に新卒ではなく20代前半ですらなく、「3年未満に離職」「うつ病」「4年以上のブランク」と悪条件しかない20代後半が、正社員として就職できるわけはなかった。
うつ病は隠せても、当時はまだ「ブラック企業」という概念がなく(2010年頃に広まる)、「退職する方に問題がある=自己責任」という考え方が今よりずっと強くて、書類で落とされまくり面接にも進めなかった。
それでも俺は英語ができたので、派遣社員だが翻訳の仕事に就くことができ、1年後には契約社員に昇格した。
だが、2009年のリーマンショック、31歳のときにあっさり首になる。
それからは、ずっと今まで派遣社員として翻訳の仕事をしてきた。
実は、少し景気が上向いてきた2014年(リーマンショック後から2013年までは第二次就職氷河期)、もう35歳を過ぎてしまった36歳のときに、正社員として転職活動をしたことがある。
そのときの圧迫面接で言われたことが、今も忘れられない。
「君は、正社員の経験は一年半だけで、その後はずっと非正規雇用なんだね」
「TOEICで満点近く取れるほど英語ができても、翻訳以外に何ができるの? 英語は目的じゃなく手段だよ。君には、英語を手段として活かせるような、正社員としてのどんな経験があるの?」
「若くもなく経験もない君は、もう二度と正社員にはなれないよ」
「非正規雇用は、正社員のための、見せしめの存在なんだよ」
「大企業でパワハラを受けても、辞めないで自殺する人っているよね。それはさ、大企業を短気離職した奴はたいてい訳ありだから、人事はだれも正社員として取らないんだよ。もう非正規雇用になるしかないわけ。正社員は、非正規雇用になるくらいなら死を選ぶんだよ」
「正社員を、低賃金や長時間労働、パワハラセクハラにも文句を言わずに辞めない社畜にするために、非正規雇用は存在しているの」
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