第6章:非正規雇用は、正社員のための見せしめ

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……俺は、会社に雇われる者には「ホワイト企業の正社員」「ブラック企業の正社員」/「非正規雇用」の3つしかないと思う。 このうち、ホワイト企業の正社員には、新卒の就職活動時しかなれない。 就職氷河期に就活した人たちは、ほとんどがブラック企業の正社員か非正規雇用になった。 ブラック企業の正社員になっても、俺みたいに耐えられない者は、精神疾患による短期離職→ブランク→再就職できない、と、らせん状の階段を下へ下へと降りていくように、非正規雇用に堕ちていく。 就活時の不運、ブラック企業に入った不運、精神疾患、ブランク……。一度「傷」がつくと二度とやり直せず、企業に社会に使い捨てされる。 非正規雇用の給料は安く、社会保険に入っていないことも多い。さらに、派遣会社などから給与の半額程度を中抜きされていることさえある。一ヶ月で治る骨折ですらクビになり、退職金もない。 社会は「わざと」、非正規雇用に「彼らは無能で怠け者で、そうした待遇に堕ちたのは自己責任だ」と間違ったレッテルを貼った。 ブラック企業は、「非正規雇用になりたくなければ、どんな理不尽にも耐える社畜になれ」と、ブラック企業の正社員に絶対服従を強いる。俺が、最初の会社に洗脳されたように。 そうして、ブラック企業の洗脳された正社員は、「非正規雇用になるよりは」と、どんな劣悪な労働条件でも受け入れる。 ブラック企業の正社員が、非正規雇用を「自己責任」と罵るさまは、ほとんど憎悪だ。 一度の失敗も許されない社会で、細い細いレールの上を踏み外すことのないよう歩みを連ねるストレスを、すべて彼らにぶつけるかのように。 本当に憎悪すべきは、経営者や政治家なのに。 労働に身分制度を持ち込んで、賃金や労働環境への不満から目をそらさせて、いまや被雇用者の40%が非正規雇用である中、最高益を更新し続ける経営者なのに。 だれ一人として、派遣会社のマージン上限の設定や、マージン非公開の罰則化を言わない政治家なのに。 「仕事は、お金のためにするのではない」と被雇用者を洗脳して、浮いた利益はどこへいくのか? 非正規雇用制度は、劣悪な労働条件でも喜んで働く国民総奴隷化のために、政府が「わざと」生み出したスケープゴート制度なのに。
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