9 《プレイヤー》

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9 《プレイヤー》

 ゲームを始めてから半月が過ぎた。ここ最近のミッションは今までのものの繰り返しか複数の組み合わせになっていた。自傷行為はいったん中断したものの(腕の包帯はまだとれていない)、早朝のホラー映画観賞、橋や屋根の上や線路への外出はまだ続いているし、同時に心の中で自分の悪口まで唱えるようになった。ただでさえ嫌いな自分が余計に嫌いになってきた。まあ自殺する人の心境は大体そのようなものなのだろうが。  そうこうしているうちに学校は二学期の中間テストを迎えようとしていた。私は勉強は比較的好きな方で成績もそれほど悪くはなかった。ただ、ここ最近はゲームの影響で授業に身が入らずついていくのが精一杯だった。わからないことはクラスメートには訊けないので、授業の後で先生をつかまえて質問するようにしていた。ある先生は「中島さんはよく質問してくるから勉強熱心だね」と褒めてくれた。普段人に褒められることなんて滅多にないのに。  テストまで残り一週間をきった。私は《マスター》にテストのことについて相談した。 《マスター》様  ご相談です。学校の中間テストまであと一週間をきりました。私は一学期はテストの成績がまずまずだったので急に成績が下がってしまうと母に心配をかけたり怪しまれそうな気がします。そこで、テスト期間中はミッションを早起きだけにしてもらえないでしょうか? そのかわり学校へ行くまでの時間を勉強にあてたいのです。テストが終わったら通常のミッションに戻ります。ちなみにテストの最終日は二十日の金曜日です。  《マスター》が私の頼みを聞いてくれるか不安だった。どうせ死ぬやつが何を言ってるんだとか言われそうな気がしていたが、返信の内容は意外なものだった。 hotaru0928さん  もうすぐテストなんですね?  了解しました。  ただし早起きを必ずすることとちゃんと勉強をすることは約束してください。  勉強がんばってくださいね。  私はほっとしたのと同時に《マスター》は意外といい人なんだなと思った。こんないい人がどうして自殺支援サイトの運営なんかやってるんだろう? そもそも職業は何なのだろう? サラリーマンか学生なのか。とにかく私はテストに専念できる状況にはなった。どうせ死ぬならせめていい成績をとって母を喜ばせたい。私はこれが最後の親孝行になるかもしれないと思いながら教科書とノートを開いた。
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