1 《プレイヤー》

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 私はかねてから自殺願望を抱いていた。  私は生まれてこの方、自分が幸せだと感じたことはほとんどといっていいほどなかった。両親は幼少期に離婚し私は母に引き取られてずっと母子家庭で育った。そのため私は父の顔をアルバムの写真でしか覚えてない。  母子家庭なだけでなく私自身もともと内気な性格で保育園でも小学校でもクラスや集団の中にうちとけることができなかった。同級生はみんな私をけむたがり距離を置き最低限の用事以外は誰も話しかけてくれなかった。たまに私から同級生に話しかけてみてもみんな冷たくあしらったり相手にしてくれなかった。つまり私には友達が誰一人いなかったのだ。  中学校に入学しても状況は変わらないどころか余計にひどくなった。ある日教室に置いてあった体操服がなくなった。私は同級生たちに体操服を見なかったかと訊いてまわったが、彼らはみんな知らないと言った。担任の先生(男性)にも相談したが、こちらでも探してみるけど自分でももう一度よく探してみなさい、と当たり障りのない返答をされた。  校内の思い当たるところをあちこち探した末、体操服は女子トイレのごみ箱の中に袋ごと放りこまれた状態で見つかった。私は悲しくなった。犯人が誰かなんてどうでもよかった。どうして私がこんな目にあわなくちゃいけないの? 確かに私は内気で暗い性格だけど私がみんなに何をしたっていうの?  担任の先生に報告したら、とりあえず見つかってよかったと言い、今度のホームルームの時間に今回の事件についてクラス全員に話をすると言ってくれたが、私はやめてほしいと頼んだ。もし犯人がクラスメートの誰かだったら先生のいないところで必ず報復するにきまっている。先生は心配してくれたが、私は明日からも通常どおり登校すると言った。  しかしその後も私へのいじめは治まらなかった。体操服の次は文房具や教科書、ノートを隠された。隠されたもののほとんどは校内の思い当たる場所で見つかったが、教科書やノートには黒い太字のマジックで「ウザい」「死ね」などと落書きがされていた。    
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