青いクジラ

１ 《プレイヤー》

自殺願望者の皆さん、《青いクジラ》へようこそ！
人生に疲れているあなた、
生きていることに希望を見いだせなくなったあなた、
本サイトはそんなあなたのお力になります！
方法は簡単。本サイトの管理者（マスター）が一日一つずつ、五十日間出す指示にすべて従うだけ。
あなたはプレイヤーとして決められた指示に従えば異世界に行って救われるのです。
もちろん、本サイトは本気で自殺を考えている方のみ向けのものです。自殺を恐れている方、覚悟のない方はどうかおやめください。
また、本サイトを利用して自殺される際は、必ず遺書を書くことをおすすめします。本サイトを利用しての自殺による死亡、負傷、疾病ならびに身体および精神の障害等に関しては本サイト運営者は一切の責任を負いませんのでご了承ください。

私はしばらく言葉が出なかった。ネットの世界にこんな物騒な自殺支援サイトがあったとは知らなかった。確かに世の中にはいじめを苦に自殺する中学生がたびたび新聞やニュースで報道されている。私は彼らの自殺がとても他人事とは思えず、彼らに対して「あきらめちゃダメ、自殺なんかしちゃダメだよ」なんてことはとても言える立場ではない。むしろ彼らの自殺したい気持ちに同情すらしてしまう。第三者はいじめられっ子の本当の気持ちがわからないからあきらめるな、自殺するなと綺麗事が言えるのだ。そう、自殺は自分をいじめ助けてくれなかった加害者や第三者（親や家族、学校の先生も含む）に対する最高の復讐手段なのだ。
そうだ、このまま生き続けてもろくなことがないのなら、いっそ死んで復讐してやろうという衝動に私はかられ始めた。私をいじめたクラスメートにも、救いにならなかった学校の先生にも。ただ一つ不安なのが母のことだった。幼いころから一人で私を育ててくれた母には何と言おう。辛いけど遺書を書いて謝るしかない。
《青いクジラ》のトップページの下部にアクセスボタンがあった。ここをクリックすればもう後戻りはできない。賽は投げられた。私は今後いったいどんな五十日間を過ごし死に至るのだろう。期待と不安が交錯していた。