定年間近の鎮魂歌

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* 「やり直し」 「……はい?」 「聞こえなかったのか?全部やり直しだ」 「全部やり直しって……」 「金剛寺がいかにお前を甘やかしていたのか、よく分かった。臨時業務だけでなく、通常業務もな」 「そんな……」 「この分だと、長く留まってもらうことになりそうだな」 「……えっ。いえ、俺が早く帰らないと、金剛寺課長も臨時業務に出る割合が増えて色々困ると思いますし」 「何が困るんだ?」 「金剛寺課長も歳ですし、他の人達も中々俺の空いた分の穴を埋めるには、少しキビシイっていうかやりたがらないっていうか。俺と交代で行ってる福沢君にもそんなに頼めない的なことも言ってたし。そうなると、金剛寺課長に自然と負担がかかるというか」 「金剛寺の体調や精神状態なら心配いらん。本来なら他の人間ではなく、アイツにいつも臨時業務に行ってもらいたいぐらいだ」 「課長って、うちの課長のこと……臨時業務に関して、すごく信頼してますよね」 「アイツはあんな感じで普段はぼやっとしているが、臨時業務をしている人間の中では、俺の次に強い。それに経験値も他の人間に比べてあるし、業務に関して真面目だ。スエット姿で棒読みしているお前と違ってな」 「うちの課長、只の【ピー!!※自主規制】だと思ってたけど、本当に強かったんですね……って、ええぇっ!?何でスエット姿で棒読みしてることを知って……ええぇっ!?」 ーー上記のやり取りが、とある2人によって松山市役所内にある四国八十八ヶ所安全対策保全課でされている頃。 「ぶえぇっくしょん!!」 「課長、風邪ですか?っていうか、唾飛ばさないで下さい。汚いしめちゃキモいです」 「いやいやいや、鬼頭君。風邪はひいてないよ。これはきっと……道頓堀君のダメ出しついでに、梶君が私の名前でも出してるんだろう。唾飛ばしてゴメンね。けどキモいって言わないでくれるかな。見た目通り、ガラスハートだから」 定年退職を間近に控えた1人の男がそう言って、薄く禿げ上がった頭をかきながら苦笑いしていた。
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