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「……で、その秘密結社の奴がわざわざ課長の前に出ばってきた理由は何なんですか?」
「私が向こうと同じく、ボカロ好きのアイドル好きだったからみたいだね」
あっさりそう言うと、視線の先の彼は間の抜けた顔を通り越して、不自然なほど真顔になった。
此方としては、笑いを堪えるのに必死だ。
まぁ、そのポーカーフェイスの崩れた顔が見たいから、あえてさっくり言ってみているのだが。
いつも飲んでいるものがきれていたので、鬼頭君から東京土産に貰ったイタリアンローストのドリップコーヒーを入れてみたのだが、これが中々絶妙に美味しい。
「……課長の見た目が強そうじゃないからじゃないですか?」
「こいつなら、弱そうだからあっさり倒せて此方の情報を抜き出せるとでも思った、とか?」
「えぇ」
「綾小路君……道頓堀君の抜けた穴を埋めてほしいのは山々だけどね。何も道頓堀君がいつも言ってる余計な一言の引き継ぎまではしなくて良いんだよ?」
「俺は事実を言ったまでです」
「あ……そう」
うちの課の人間は、どうも年上の人間を敬おうという気持ちは更々ないらしい。
「とりあえず、そいつのこと今から話すから聞いてよ」
私は、先日自分の身の上に起こった出来事を綾小路君に一から丁寧に話すことにした。
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