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数年前のそんとき、テレビ局の控室で目をむいて見つめてたらしい俺へ、名字の漢字が変換できない哲也が微笑んで見せた。
「いつか、つか、今すぐにでも、その来世、探したほうがいいって、辰堂クン。でないと、ななこちゃん大変だから」
「てつぽんの言うとおりだって、とっくん! 俺にも、なんかわかる」
ツッコミ入れてきた天野ってやつは、アーティストな、映像系の天才。感受性がすげえヤバくて、ときどき予言とか、テレパスじゃね? って思えること言う。そしてもう一人、ヘアスタイルがようやく決まったらしくて機嫌がよろしい、不思議ちゃん系の御厨(みくりや)も、なんかうなずいていたし。
「俺もさぁ、篤秀(とくしゅう)の娘さんって、なんかほかの子どもと違う気がするから……心配」
「そら、俺と妻に似てっし、ぜってー美少女になるし」
「そーゆーこじゃなく!」
哲也がわざとらしく頭を抱えて、天野も御厨も腹を抱えて笑ってたら、トイレから戻ってきた元ヤンの各務(かがみ)が、真剣な目で俺につっかかってきたのを今もはっきり覚えてる。
「あの子のことかよ……篤秀もさ、だーからあんな早く結婚できたって、自覚あっだろ」
断言されて、俺はおおげさにため息をついて見せたんだ。国民的トップアイドルグループの、トップの人気を誇る俺。その俺が憧れの女性アイドルと二十代ちょいで結婚するなんて、本当だったら事務所が悲鳴をあげて、阻止していたはずだった。今だって、これのせいで事務所に縛られてるって、本気で信じてるやつらはいる。すっげえ勘違いだ。デマとか流すなって。
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