chapter3-2

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 昼食は和食の店だった。オープンしたてということで少し並んだが、待つことが苦にならない家族なので雰囲気は穏やかだ。  ランチメニューはお膳だったので、父は魚のあんかけ、母はレディースセット、翠は豆腐ハンバーグを選んだ。それぞれが丁寧に調理されているとわかる出来で、魚は臭みがないし、品数が多いレディースセットも味のバランスが良い。豆腐ハンバーグは具が多く、彩りも食感も楽しめた。  家族みんな好評で、特に前回が外れだったこともあり父は大喜びだ。夜は日本酒バーにもなるらしく、酒が好きな父はさらにうきうきしていた。近いうちにディナータイムにも訪れるだろう。  しっかりと薬を飲み、翠たちは店を後にする。  買い物したいという母の希望で、次の行き先は家の近くのショッピングモールになった。集合時間を決めて、各自好きに回ることにする。  翠は特に見たいものもなかったので、暇つぶしにとモールの最奥の本屋に足を向けた。 偶然にも面白い評論の本を見つけたので、斜め読みで一冊読み切る。性別と教師のタイプを比較したもので、こういう本のお決まりらしく、信憑性はないが読み物としては興味深かった。  そうこうしているうちに時間が潰れたので待ち合わせ場所に向かう。途中でペットショップを通りかかると、トリミングされているチワワがガラス越しに見えた。足を突っ張って、全身全霊で嫌がっている。犬も大変そうだ。  このショッピングモールはドッグランがあり、駐車場や行き来する車内で犬を見ることが多かった。ペットショップも敷地が広く、品も豊富なのだろう。犬を飼っている人が集まる理由もよくわかる。  父がアレルギー持ちの為に翠はペットを飼ったことがないが、犬も飼い主も楽しそうでなんだか微笑ましい。 「……あれ?」  見るともなしにドッグランを眺めていると、視界に見知った顔が飛び込んでくる。狼と見紛うような凜々しい姿をしたやけに大きな犬の種類は知らないが、飼い主には見覚えがあった。
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