魔装青年キノエ

１

二周目が終わり、そろそろ甲は走馬灯に飽きてきた。
体は動かない。怪人の巨大な拳はじわじわと迫ってくる。
目と鼻の先にある握り拳はでかい、黒い、そして何故か生臭い。
これが当たればひとたまりもないだろう。

「鳳仙極華！」
少女の声と共に、怪人の頭に何かが当たりカンカンと音を立てる。
ぐらり、と怪人が少し体勢を崩し、拳が甲から逸れた。

「そこの人！危ないからさっさと逃げて！」
窮地から甲を救った青い髪の少女が叫ぶ。
逃げなきゃ。
走馬灯はふっと途切れた。