金木犀のひととき

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―――――― 秋が深まる季節のカフェ・オリエンタリス。 「こんにちはー」 元気な声で一人の男性が入って来る。 「いらっしゃい、颯」 マスターの馨は彼が来ることが分かっていたのか、颯がカウンター席に着くのと同時にロイヤルミルクティーを差し出した。 「あっ、ロイヤルミルクティーだ、ありがとう」 「今日は忙しかったのか?」 「うん、あちこち配送してきた、キンモクセイの苗とかね」 「そうか、良かった。お疲れ様」 颯はオリエンタリスの近くで小さな花屋を営んでいる。 自らお客様の所へ出向いてガーデニングについて相談に乗ったりアドバイスしたりすることもあるという。 そして、花や植物を届けることもあるらしい。 馨が淹れてくれたロイヤルミルクティーの優しい甘さに疲れを癒しながら、颯はオリエンタリスの庭を眺めた。 「やっぱりここの庭はいいよねぇ」 「颯のおかげだよ」 庭の植物たちは深まりゆく秋の空気を湛えているようだった。 秋という季節はどこか寂しさがあるようで、でも、植物たちの色づく姿が楽しみな季節でもある。
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