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「もしもし、お母さん?」
「もしもし・・・・・・亜沙子なの?」
「もう、お母さん、また誰からなのか見ないで出たの?」
「・・・・・・早く出なくちゃと思って」
「そうよ、さっきから何回もかけてるのに全然出ないから・・・・・・心配してたのよ」
「ちょっと庭に出てたもんだから」
「またなの?足の調子はどうなの?」
「・・・・・・まぁまぁかしらね」
「あんまり無理しないでよ、いざ引っ越しの時に動けないなんて大変だから」
先程から何度か電話が鳴っているのは分かっていた。
それでも、一度出た庭での作業を中断するのが憚られて、しばらくそのままにしていたら案の定娘からの電話だった。
最近は詐欺の電話なんかが増えているから、と娘が新しい電話機をつけてくれたのはいいけれど、昔からの習慣はなかなか抜けないもので。
電話が鳴っていれば受話器を取ることに意識が行ってしまう。
心配されているとは分かっていても、短い時間にそう何度も電話をかけてくるのは娘か知り合いだろうという気持ちもあって何の警戒心もなく電話に出ていた。
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