11人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
2.経済部観測
「探偵ごっこか。35歳にもなって」
「うるせ」
昼前に一階にある喫茶シベリヤで、経済部の元同僚、平尾に会った。メタル・テンの情報をもらうためだ。
「まだ、みそぎ中だろうが。たいがいにしとけって」
ったく、大新聞社はどいつもこいつもリーマンばかりで。
「いいから、聞かせろ」
「何も出ないんじゃないかな。業界じゃ超優良の二重丸。三友から財務部長と営業本部長も受け入れてる。大手出身が要に据えられ、コンプラも万全」
「違法残業とか」
「ないねぇ。工場もパイプセンターも8時には鍵絞めるし、本社は22時で完全消灯、ロックアウトだからなぁ」
「取引先の評判は」
「すごいね」
「何が」
「神だ仏だって称える話ばかり。商社金融で決済ずらして救ってもらったとか、リシャーかけなきゃなんないストック、正価で引き取ってくれたとかさ」
「三友相手の数字、インチキねえか」
「だから、そんなことする社風じゃないって。社長は善人を絵に描いたようなお人だ」
「う~ん、でも自殺してんだよ。パワハラやネグレクトとかねぇか」
「いやいや、元々うつで会社辞め引きこもってた社員だろ。情けかけて彼を雇ったメタル・テンが被害者ともいえるんじゃないかな」
「なら何で会見、開く?」
「そこがあの会社なんだよ。律儀、バカ正直」
「んな、何もねぇか・・・」
「ないなぁ」
最初のコメントを投稿しよう!