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「あなたの指をもいだのは、あの方の望みですわ。でも、あなたが与えた痛みはこんなものでは足りなくてよ。」
「小向さん、あなたは実に罪深い。本物の人でなしですよ。」
このおじさんに追い詰められて亡くなってしまった人のひとりは精神的に病んで自ら電車に飛び込んだらしい。その時に電車に引かれて指が千切れてしまった。おじさんに与える痛みは、追い詰めらた人が受けた痛み。だけど、心に受けた痛みは、このおじさんには理解する事は出来ないんだ。だって…人でなしだから。こんな大人なんて…。
園長先生も施設の先生もみんな…人でなしなんだと今更わかった。僕の他にもひどい目にあっている子供はいた。いつの間にか居なくなった子供も。そう思ったら…怖くなった。
この夫婦は、もしかしたら正義の味方なのかな…。困っている人がいたら助けるって言ってた。僕も助けてもらった。美味しいご飯を食べたのは、何年ぶりだろう。施設に来てからは一度もない。
あ…足をもいじゃった。これも誰かの望みなんだと何となくわかった。
僕は、おじさんが騒いでも悲鳴をあげても全然可哀想だとは思わなかった。
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