11人が本棚に入れています
本棚に追加
突然、電気が消えた。どこかに雷が落ちたみたいだ。旦那さんも奥さんも慌てる事なく、ちょっと待っておいでと言って、旦那さんがロウソクを立てて火をつけた。お洒落なキャンドルスタンドは暗闇を走る稲光とよく合っていた。
薄暗い部屋で、ソファーに座る僕達のぼんやり見える顔がちょっと可笑しかった。
「あら、この子ったら、怖くないのかしら。」
「純、暗い部屋で怖くないかい?」
「はい…平気です。」
「まぁ、頼もしいわね。でも、隣にいてちょうだいね。」
くすっと笑う奥さんは、可愛らしい人なんだと思った。ロウソクの灯りに揺れる3人の影。こんな事も僕は嬉しいと感じている。
「で、純。さっきの話だが、何か思う事はあるかい?心のままに、正直に話して欲しい。私達の行いを見ていただろ?殺人鬼に見えたかい?」
僕は、そうは見えなかったと首を振った。
「あの…僕、よくわからないけど、あのおじさんを可哀想だとは思わなかった。お二人は正義の味方なのかな…って思いました。」
「まぁ!あなた、正義の味方ですって。なんて可愛らしい事をいうのかしら。
ねぇ坊や、私も主人もね、私達の子供になって欲しいと心から思っているのよ。」
奥さんの言葉を聞いて、そうだよって旦那さんが優しい顔をして微笑んでる。ロウソクの灯が温かく感じたのは初めてだった。
最初のコメントを投稿しよう!