第1章

14/21
前へ
/21ページ
次へ
もし…僕がこの夫婦の子供になりたいと言ったとして…そんな事が出来るの? 「純。心配は要らないよ。私達の子供になりたいと思ってくれるなら、私達の子供になれるんだよ。」 本当に驚く…旦那さんは僕の心が読めるのかな…。僕の考えている事に返事をするんだ。 「僕…あそこに帰りたくない…。本当に僕を二人の子供にしてくれるんですか…?」 「ああ。勿論だよ。純には辛い思いをして欲しくないからね。」 「ええ。私達と一緒に居ればいいわ。私も嬉しいし、楽しいわ。」 「ただね、純。さっき見たように私達は悪い人を始末する事があるんだ。それは理解出来るかな?」 僕は頷いた。そして信じられない事に僕も手伝うと言っていた。何の抵抗も嫌悪感もなかったんだ。 奥さんは一緒に居れば嬉しいと言ってくれた。僕は優しい気持ちが嬉しくて、知らないうちに泣いていた。今日、会ったばかりなのに不思議な展開に戸惑ったけど、僕はこの夫婦の子供になりたいと思っている。 「僕、二人の子供になりたい。」 隣に座る奥さんが、僕を抱きしめた。なんて温かいんだろう…。喜んでくれてる。旦那さんが、次は私の番だと僕に手を伸ばした。奥さんが僕の背中をそっと押して旦那さんの方に行くように促す。 ソファーに座る旦那さんの前に行くと、ふわっと包み込むように僕を抱きしめてくれた。 こんな温かさに包まれるのは両親が生きていた頃以来だ。忘れていた温かさに胸が詰まる。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加