第1章

3/21
前へ
/21ページ
次へ
走って走って、ひたすら走って気づいたら草むらにしゃがみ込んでいた。ここは別荘地だ。自然林の中に点々と立派な家が建っている。雲行きが怪しくなって空を見上げるとポツリと水滴が顔に当たった。マズい、どこかで雨宿りさせてもらおう。 ここまで追っては来ないだろう。里親になる夫婦との面談の日…僕は逃げた。 両親を事故で失ったのが5歳の時。それから顔も知らない親戚に預けられ、1週間もしないうちに施設に移った。そして3年経ったある日、子供が欲しい夫婦の元に里子に出される事になった。審査に時間がかかって、やっと面談の日を迎えられたと園長先生が喜んでいた。 だけど、僕は知ってる。僕を欲しいと言う夫婦が話しているのを聞いてしまったんだ。子育てではなく飼育と言った。老後の面倒を見させる為に飼育をしようと話しているのを聞いて怖くなった。何をさせられるか…わからない…逃げろ…本能がそう言ってる。僕は走った。 そして、たどり着いた場所が…ここだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加