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下島 7
美紀が立ち去って、数分が経った。
黒い影が生垣の間から現れ、川口の死体に駆け寄った。
下島は血にまみれた川口の頭を揺さぶってみたが、すでに事切れているのは明らかだった。
下島の目に涙が溢れてきた。
「すみません、俺は、・・・・俺は、女が銃を出した時、足がすくんで声を出すこともできやせんでした。やっぱり俺、川口さんのようにはなれないっす。本当にすみません」
下島は川口の死体のわきに両膝をつき、両手も地面について涙を流した。
やがて下島は仰向けに横たわる川口の手を握り、指の一本一本を広げ始めた。
「本当にすみません」
涙声で言いながら、下島はジャンパーから赤いレンガを取り出した。
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