下島 6

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下島 6

 日が経つにつれ、川口の変装のことは下島の頭の中で小さくなっていった。それに代わるように、また下島の心の中でめらめらと燃え上がってきたのは、人間の指に対する欲求だった。  下島は川口の変装について、自分なりの結論を出していた。川口はやはり、他の組の動向を調べるために動いている。ということは、新しい勢力が近いうちに来るということだろう。そうなれば組同士の大きな抗争にまでいかないにしろ、小競り合いくらいはある。川口からレンガを渡される機会も増えるかもしれない。  そう思うと、下島は期待にぞくぞくした。  早く中村の老いぼれがおっ死んでしまえばいいのに。  川口の変装姿を見かけてから二週間ほど経った日だった。  時間を気にしている。  下島は川口が今日、また変装して何かの捜索に出るのだろうと思った。ほかの者たちはそんな川口の変化に気付いていないし、下島自身、二週間前の川口を見ていなかったら、そんな川口の様子に気付かなかっただろう。
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