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その音の正体に気付き、川口はビクンと体を震わせると、身を沈めながら振り向こうとした。
美紀はそんな川口の動きを予想していたようだった。
鈍い音がして、銃弾が川口の胸に突き刺さった。
倒れた川口が、撃たれた胸に手をやろうとしたが、うまく力が入らなかった。心臓はそれたようだが、どのみち助かりそうもないと悟った。
美紀も同じ考えのようだった。二発目の狙いを川口の頭に定めていたが、撃つつもりはないようだった。
「てめえ・・・・」
川口は美紀をにらんだ。暗がりで表情はよく見えない。
川口の口の中に、どろどろとしたものがこみ上げてきた。
「てめえ、何者だ」
血を吐き出しながら、何とか言葉を放った。
「私は中村美紀」
美紀はそれだけを言った。
中村、中村・・・・。確か中村組の組長には年の離れた娘がいると聞いたことはあったが。
川口はそれ以上考えることができなかった。
それきり、川口の意識は閉じられた。
美紀は川口の死を確認すると、辺りを用心深く見渡した。そして消音機付きの小型拳銃をバッグに入れると、足早にその場を離れた。
闇の中に溶け込んでいく美紀が頭に手をかける。
カツラを取ると、はらりと長い髪が背中に広がった。
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