第1章

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 死体の処理の方法なんて知らない。埋めたところで、俺が美貴と付き合っていることは多くの知人が知っている。なんならSNSにもあげている。美貴が消息不明となればまっ先に疑われるだろうし、アリバイもねぇし、そもそも事実だ。執拗な取り調べを受けて俺はあっさりと自白してしまうだろう。  だいたい、俺は殺したかっただけで、それがトリガーとなって引き起こされるアレコレについては詳しく想定していない。ただ魂の形が刃物に変形してしまっていて、相手を傷つけることしか考えられなくなっていただけだ。  まぁしゃーない。俺は殺人犯。終身刑とまでは行かないだろうけど、十年か二十年はムショで暮らすことになろう。真っ当な人生なんてもう歩めない。  ふぅ、と煙草の代わりにため息をはいて俺はシートにもたれかかった。  殺した理由を後付けで考える。  そもそも何で美貴を殺そうと思ったんだっけか。  裏切られたからだよな。うん。俺の人生賭けた愛を否定したんだ。別に否定するだけなら構わない。普通に別れよう、って言ってくれたら良かったんだ。でも俺が許せなかったのは言い訳をしたこと。 『子供は裏切れない』  おいおいちょっと待てよ、と。そりゃ大層美しい言い訳だが、内情が酷すぎる。クリスマスも誕生日も大晦日も正月も俺と一緒にいたくせに、今更そりゃないだろ。既に裏切ってんだろ。思い出したような理由で自己正当化するとかひでー女だな。  ちらりと隣りで眠っている美貴に目をやった。  可愛くない。  鼻の大きな女にしか見えない。えっ、ていうかこいつって本当にこんな顔だったっけ。  今の俺には、美貴が別人のようにしか見えなかった。  というか実際別人だった。美貴の魂は失われている。ここにいるのは美貴じゃない。ここにあるのは、ただの死体だ。  何となく、彼女の携帯のロックを指紋認証で解除して中身を見てみた。  旦那とやらの写真や、子供に関しての情報が無いか調べるためだ。結果から言うと、それはすぐに見つかった。  可愛らしい男の子だった。まだ幼稚園生だろうか? だが自宅で撮った写真というよりも、園内や屋外で撮った写真の方が圧倒的に多かった。  SNSをのぞき見してみた。裏アカウントの形跡は無く、俺が知っているアカウントしか存在しないようだった。  そして俺は真相にたどり着いた。  それはメッセージをやりとりするアプリに書いてあった。
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