第1章

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 旦那との、会話だった。俺はそのログをさかのぼり、死体の横で読みふけった。 「お願い、子供に会わせてほしいの」 『無茶苦茶言うなよ。君は、自分が何をしたか分かってるのかい?』 「ごめんなさい。でも、寂しいの。会いたいの」 『そうやって自分の感情ばっかり優先させて。僕やカズキの気持ちは全部無視してるじゃないか』 「ごめんなさい。何でもするから、もう許して」 『今も浮気してるんでしょう?』 「してない」 『嘘ばっかつくなよ。ああ、違うか、そうか、君にとっちゃ浮気じゃなくて本気ってことだよな』 「ちがう」 『アレだろ、その浮気相手と結婚してカズキと暮らしたい、って考えてるんだろう?』 「そんなことない。どうしてそんな酷いこと言うの?」 『君のやってることの方が酷いよ。別居中、君が何してたか僕は全部知ってるんだぞ』  そして旦那から写真が送られる。  それに写っているのは、テーブルの上に置かれた現像された写真だった。高田翔太と岩井美貴が逢い引きしている写真。 「なにこれ、なんで」 『君のお父さんが探偵使って、わざわざ送ってくれたよ。親族揃って最悪だよね。娘とは別れた方がいい、なんてありがたい忠告をくれたよ。マジ最悪だよ。知りたくなかった』 「ごめんなさい。違うの。これは、別れ話を、ちゃんと別れるために話し合ってきたの」 『君の嘘は聞き飽きた』 「信じて」 『何を信じるっていうんだよ。いま一番信じられるのは、君が信用ならない女だっていう僕の中の確信だけだよ』  彼女の返信が止まる。  それでも旦那は文字を打ち続けた。 『愛してたよ。学生時代からずっと付き合って、妊娠したから責任とって結婚した。でもあの時に僕にとっちゃ責任を取ったわけじゃない、愛してたから結婚したんだ』 『でも君は他の男と浮気した』 『だから別れようって、そうなるのは当たり前の話しだろ? でも君は嫌がった。カズキが片親じゃ可哀相だからって意味のわからないゴネ方をした。なんだそれ? 意味が分からない』 『正直に言う。僕は君と結婚できて嬉しかったんだよ。カズキが元気に育ってくれることも本当に幸せなことだよ』 『でも、君は他の男に何かを見いだした。それはそれで仕方ないことかもしれない。僕が悪かった部分もあるかもしれない。でも君は、カズキを裏切った。それは誰にも否定出来ない真実だと思う』 『君はたった一度の過ちを犯したんじゃない』
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