十六夜の月の下

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「salut a tous」 出ると少し間が空き 『このままフランス語で話せ』 この声 「か」 課長!!課長と言いかけて口を手で塞いで周りを見ると小阪若葉がじっと私を見ている事に気が付いた。 私が取った行動が何か変に感じたらしく訝しげに見ている。 『はい。どうされましたか?』 私はフィリップと話すように話しかける。 フランス語小阪さんにはわからないよね。 『さっきの小阪だったろ。』 『はい。睨まれてます。』 『なんで?』 なんでって。 『よりによってなんでフランス語で?』 『この方が邪魔されず話が出来る。』 『仕事の話ですよね。』 『他に何がある。』 何がって別にないけど 『で、何ですか?』 一瞬止まった。 『どんな様子だ?』 『どんなって、今日も課長は?と聞かれて休んでますと謝ってばかりです。』 なんかもう腹がたつ。 『どうするんですか?』 怒鳴りたいけど、怒鳴れない。 我慢我慢。 『そうか、分かった。』 「merci」 そう言うとまた電話を切られてしまった。 「大丈夫?」 後ろから畠野さんから声が再び掛かる。 私はさっきと同じように上半身をねじる形で振り返り 思いっ切りの笑顔で 「大丈夫です。フィリップさんでした。 課長はどうしてる?と聞かれたので、 お休みして居ますと答えました。」 話の辻褄を合わせるかの如く話をした。 逆に隠すような事をすると後が大変な事になる事ぐらい理解出来る。 課長のバカ!!
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