地下室の鼓動

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地下室の鼓動

見なければよかった。 そう後悔したが後の祭りだ。 普段は立ち入りを禁じられている(かび)臭い地下室の真ん中に、ぽつりと置かれた漆黒の木箱を開けてしまった。 中には脈打つ肉塊があって、ぬらぬらと赤く濡れている。 これは誰の心臓だろう。 とくん、とくんと規則正しく震えるその生温かい肉塊を手に取り、僕は諦めの境地に至る。 次は僕がこうなる番だ。 何十年、何百年かも分からぬ長い年月を、この黴臭く真っ暗な地下室で、身代わりがやって来るまで待つしかないのだ。
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