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寄生
ガタンゴトンと電車が揺れる。
朝の満員電車には、いつまで経っても慣れそうにない。
四方から押される肉の感触と、もわっと熱い体温。おまけに強い香水の匂いに鼻が曲がりそうだった。
(あと一駅の辛抱だ……)
そう自分を鼓舞していると、ぽろり、と白い何かが落ちていくのを目に留めた。
(なんだ?)
不思議に思って目線で辿ると、斜め前に若い女性の後頭部が見えた。女性は、垂らした髪に隠された首筋をぼりぼりと掻いているようだ。
フケだろうか。嫌だな、と眉を顰めている間も、女性の首筋からぽろぽろと白い何かが落ちていく。
(勘弁してくれ……)
そううんざりしていると、女性の髪の隙間からちらりと素肌が見えた。
(!?)
思わずギョッとする。
白い楕円の、まるで卵のようなものが、女性の肌にびっしりと生えていたのだ。ぼりぼりと掻いて抜け落ちた箇所からは少し血が流れていて、幾つかの割れた卵の中から、ミミズのような生き物がちろちろと顔を出している。
『次は◯◯駅、◯◯駅。お出口は左側です』
車内アナウンスにビクリと肩を揺らす。
駅に着いて扉が開くと、今見たものから逃げるように私は下車したのだった。
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