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それに気づいたのには大学三年生の冬だった。
それまでは、透には大学で知り合った彼女がいたし、玲司も交際期間は短かったものの在学中に彼女が二回できた。
玲司の別れの理由は些細なもので、一人目の彼女は、彼女の束縛にうんざりしてしまった。
二人目の彼女は、若気の至りというやつであろうか。付き合っていたのかも正直曖昧だった。身体の関係はあったものの、いつの間にか連絡をとらなくなり自然消滅していた。
どちらも全て一年生の時の話で、無論この時はまだ透に恋愛感情を抱いていなかった。それ以降、玲司は恋愛がなかったし、自身もさほど興味がなかった。
一方、透はというと、一年生の夏から付き合いだした彼女がいたが、三年生の冬、年明け前に彼女を振った。
正確に言えば、振られに行った。
黒髪で華奢で、清楚という言葉が合致する彼女だった。透は彼女にベタ惚れだったし、彼女のことを話す透を見ていると羨ましく、微笑ましく、友人として透の幸せを見守っていた。
しかし、三年生の秋頃に「彼女の様子がおかしい」と、透から相談を受けた。
彼女はカラオケ店でアルバイトをしていた。
今までは仕事終わりにすぐ連絡をくれていたのに、最近は連絡がなくなっていた。それを不安になり彼女に尋ねると、残業だっただの疲れていただのと返され、仕舞には何を疑っているのかと逆ギレされるとのことだった。
このとき玲司は、彼女の浮気を疑った。けれど透を傷つけまいと
「透の溺愛っぷりに彼女が疲れているんじゃないか」と本心を伏せた返事をした。
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