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椿
チーフの言葉で、透に言う決心がついた。
──俺が側にいる。
「ありがとうございます! 俺、そいつに言います」
「おうよ」
玲司は立ち上がり、チーフに失礼しますと会釈をして帰路に向かった。
「青春だなぁ……」
はーっと白い煙を吹きながら、急ぎ足で帰る玲司を見つめていた。
バイト先の繁華街を抜け、辺りには街頭の光しかない落ち着いた静かな道へ出た。日付はもう越えていたがが、まだ起きているだろうと電話をかけた。四コールに入るぐらいのところで透の声がする。
『玲司? どうした?』
「あ、えー、メリークリスマァース」
いざ言うとなると、言葉を選んでしまった玲司はとりあえずいつもの調子で会話する。
──何がメリクリだよ
正直に、ありのままに、透に言えば良いのに。俺が側にいるって決めているのに。
透からの「メリクリー」が返って来ていたのも気づかず己と葛藤していた。
『……玲司?』
「あ、ごめんごめん。今、家? 一人?」
もしかしたら、俺の見間違いで、今彼女と過ごしているかもしれない、その返事を少し期待していたのだが
『うん』
と、そんな可能性を打ち消す一言。
「そっか……」
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