椿

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椿

 「もしもし、久しぶり。──うん、あの……さ……」  玲司(れいじ)は、カフェでテイクアウトしてきたホットコーヒーを片手に街路樹の下にあるベンチに座っていた。  街は今日のために、白く、赤く、緑に染まり、ネオンも輝きだし、街にサンタクロースがたくさんやってきている。恋人同士であろう人々も今日という日を口実に、いつもより密着しているようにも見える。  過ぎ行く人々を見つめながら、玲司は一年を振り返っていた。  仕事で功績を納め昇格したこと。部下に子供が誕生したこと。上司には相変わらず扱き使われていること。自分に彼女ができたこと。そして、旧友と連絡をとったこと。    今年は少し解放されるかもしれない。この日の愛おしさから。    遡ること三年前の今日──  どこからか流れてくる陽気な冬のメロディ、我が家が一番、と住宅のイルミネーションが競い合い並ぶ。  世間はクリスマスが近づいているらしい。クリスマスが毎年恒例のように、玲司も毎年恒例思い出すことがある。思い出すことによって自らを律しているのだが。    
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