彼に連れて行ってもらうことに

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「……知らない人間に名乗る義理はないな。じゃあな」  といって、僕の前から急いで立ち去ろうとする。  けれどここの世界に飛ばされて? 初めて出会った人が彼なのだ。  人通りも多いのかどうか分からないこの道で、まずは話を聞かないと何が何だか僕にも分からない。  そもそもテレビゲームやパソコンゲームであれば初めに説明という名のチュートリアルがあったりするものだ。  ちなみに僕は、チュートリアルは飛ばす派だ。  けれど今のような状態であれば、間違いなく説明を丁寧に読んでいたし聞いていたと思う。  そもそも勝手にこんな場所に連れてこられたんだから、そのあたりも説明してくれてもいいと思う。  でもそんな説明役は現在存在しない。  だから僕は自分でできる限りこの世界の情報を集めないといけないと瞬時に判断したので、その目の前ていた人物のかぶっている布を掴む。  その人物は嫌そうに目を細めて、 「放せ」 「僕、何だかよく分からない内にこの世界に来ていたみたいなんです。なのでこの世界の事を教えて下さい!」 「……嫌だ。そもそも頼るのは俺じゃなくていいだろう」 「でも他に人はいないし……あ、馬車が走ってくる」 「ほらな、あの馬車を止めて話を聞くと良い。……俺は面倒事にこれ以上は関わりたくないんだ。それに……」 「それに?」 「そういった異世界の人間を保護して都市の神殿に連れて行くと、報奨金が出るはずだ。だから誰でもいいから話しかけて連れて行ってもらえ。その人物に報奨金が支払われるとなれば、大抵は快く快諾してくれるはずだ」 「そうなんだ! ありがとう、えっと……」 「別に、一般的な話だから、礼を言われる筋合いはない。それじゃあ俺はもう行く」 「うん、教えてくれてありがとうね」
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