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そう言って僕は手を振る。
僕をあからさまに避けるような言動をしていたけれど、何かわけありなのかもしれない。
でも、僕にとって必要な情報を教えてくれた恩人には変わりないから、僕はお礼を言って手を振る。
それにその人は答えてくれなかったけれど、小さく笑ったように見えた。
そして走ってきた馬車に手を振って止まってもらったのだけれど……中から太った男の人が出てくる。
見た目からいかにもお金持ちそうで、着ている物も高級品だなと即座に分かるしたての良い服だ。
しかも黒髪に緑の瞳をした美形で、歳の頃は40代頃に見える紳士だった。見かけだけは。
だがその人物は、僕の体を上から下まで値踏みをするように見てから、
「ふむ、これは……なかなか可愛いな、連れて行こう」
発言が何かおかしい。
しかも舐めるように僕の体を見たような気がする。
そこで僕は気づいた。
「ちょ、まさか僕、体を狙われている? あ、あの、僕は男なのですが……」
「そうなのか? まあ、これだけ可愛ければ男だろうが女だろうが構わないな。さて、こんな所をそんな軽装備で歩いている割に小奇麗だから、大方何処かの貴族の愛人でもしていたのだろう。この見かけは気に入ったから、妻にしても構わないがな」
「ち、違います僕は……やめっ、何で僕の服を脱がそうとするんですか! や、やだ、誰か助けてぇえええ」
僕の話を聞かずに、服を脱がせようとする。
よく見ると別の高級そうな服を片手に持っていたので、その服に僕を着せ替え用としていたのかもしれない。
けれどそんな事にまで気付く余裕はなくて、貞操の危機だと僕は悲鳴をあげて逃げようとする。
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