忘れた出会い

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 あれ、どうして僕はこんな所にいるんだろう……そう僕は思った。  もう遅いから寝なさいと母に言われて、早めに布団に入ったのだ。  それから柔らかい布団が温かくて気持ちが良いな~と思って、気付けば意識が遠のいて眠ってしまったであろう記憶はある。  なのに今、僕は、綺麗な花畑の傍に生えている木々の傍に立っていた。  白やピンク、水色に紫、黄色に赤といった、様々な色の花が、各々の個性を主張するかのように咲き乱れ、風に揺れている。    甘い香りに酔ってしまいそうだと僕は思いながら、その花畑から少し上の場所を見上げる。  花畑から少し離れた場所には大きな屋敷があって、イメージとしては観光資源になりそうなヨーロッパのお屋敷といったような風情だった。  白い壁には金色の流れるような水に似た模様が付けられた枠に縁取られた窓が、規則正しく連なっている。  そしてここから見えるのはそのお屋敷の側面らしく、入口になっていそうな場所は何処にも見当たらなかった。  そこまで全体の景色を見回してから僕は、本当に僕、何でこんな所にいるんだろうと首をかしげる。  けれど僕はすぐに気づいた。  きっとこの世界は僕の“夢”の世界なのだ。  だから突然こんな場所にいたりするのだ、と。
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