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「僕よりずっとずっとずーっと女顔の芽衣に言われたくない」
「侑希は分かっていないな、鏡をみなよ、鏡を。どう考えても、僕と同じくらい可愛い顔をしているから。それに高校の頃、男子校だったから僕と侑希のセットで"姫"と呼ばれて女装させられたりしたでしょう?」
「うう、今更ながらそんな黒歴史を思い出すなんて……で、でもあの頃よりも、一センチは身長が伸びたし!」
「その程度で僕よりも男っぽくなったなどと思わない事だ、侑希」
「くぅう、よし、ここで必殺技だっ、技を選択して、とりゃああああ」
そこでようやく目の前の敵を撃破した僕は、勝利を確信した。
と、そこで僕は芽衣が僕を意味深に見ているのに気づく。
どうしたのだろうと思っていると、
「今更でも、僕に話してくれたのは嬉しかった」
「……うん。というか、ようやく過去の思い出にする決心がついたのかも」
「随分長い片思いだったね」
「……そうなのかな?」
あれはどうやら片思いであったらしい。
夢を夢だと思っていたし僕自身本気にしていないつもりだった。
でも、それでも心のどこかであの子が僕には忘れられなかったのかもしれない。
いまさらながらそんなことに気づかされた僕に芽衣は、
「そうだよ、あの男子校の怪しい校風の中でも、他の男とは付き合ったりしなかったしね、侑希は」
「それは芽衣だってそうじゃん」
僕だけじゃないのに何でそんな余裕ぶって、芽衣はいうのだろうか?
そう僕が思って言い返すと、芽衣が目を瞬かせてから次に、優越感に満ちた表情になり、
「? ああ、知らなかったんだ。僕は男性の恋人がいたよ?」
「ええ! 僕知らないよ!」
「……こっそり付き合っていたからね。でも全員、僕の運命の人ではなかったんだよね」
さみしそうに芽衣は呟くが、僕としては、
「しかも、全員てことは、何人もと付き合っていたんだ。僕、芽衣に彼氏がいるって全然気づかなかった」
「侑希は奥手だからね。それに鈍感だし」
「鈍感って、そんなことないもん」
「はは。……でもさ、そんな風に忘れようって思うならさ……僕なんてどう?」
「何が?」
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