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そんな風に肯定的に考えて、メルを見るフレイズはあれっと気づく。
メルは目立たない、普通の……けれど優しげな顔をしていたはずなのだ。
なのに今見ると、その銀色の髪も朝の光の中で宝石のように煌き、その瞳は夕暮れの太陽のように赤く輝く。
その美しさにフレイズは目を奪われる。
そんな動きを止めたフレイズにメルは、
「どうしたのですか? フレイズ」
「え? いや、メルが綺麗だなって」
「な!」
メルの顔が朱に染まる。
まさかここでこのナルシストなフレイズにそんなことを言われると思わなかったとか、そう言ってもらえるのは嬉しいとか、魔法が聞いているはずだけれど嬉しいと思ってメルも顔を赤くして俯いた。
そんなメルの様子に更に可愛いと思いながらもフレイズは、
「あ、えっと、そんな変な意味じゃなくて……」
メルが顔を赤くしたのでフレイズも焦ってしまう。
よくよく考えたら俺、なんて恥ずかしいことをメルに言っているんだろうと気づいたフレイズも顔を赤くする。
そこで、ボンッとフレイズの体が煙に包まれて、猫の姿にフレイズは戻ってしまう。
「うう、また猫に戻っちゃったよう」
悲しげに呻くフレイズ。そんなフレイズにメルは少し黙ってから、椅子から立ち上がりフレイズのもとに歩いて行く。
やがてフレイズの前までやってきたメルは、フレイズにキスをする。
柔らかい唇が触れると同時にフレイズが再び人間の姿に。
「えっと、メル、ありがとう」
「どういたしまして」
微笑むメルの顔が間近にあって、幸せな気持ちになるフレイズ。と、
「でもこうすぐに戻るのでは、外は出歩けませんね」
「そうだ。人間に戻れるのってどれくらいなんだろう。それとも、何かの切掛で猫に戻るのか」
「あるいは両方か」
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