第1章

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 私がその話を聞いたのは、実習先の職員さんからだった。今は使われていない、竹島駅という駅があると言う。その駅は戦時中に空爆を受け、大勢の被害者を出した。その付近では今も、その時の被害者の霊の目撃談があったり、時にはあの世へ連れていかれたりすると言う。  二週間の教育実習を終えた帰路。私は実習先の最寄りの三ツ屋駅から電車に乗り、一両目の座席でうとうとしていた。 「次は竹島~、竹島~」 その声でハッとした。竹島駅って、今は使われていないのでは?私の記憶違いかな?  しかし、嫌な予感が胸を掠める。確かに使っていないと言っていたという自信。このまま、乗っていた方がいいのかしら。でも、その先まで行って戻ってこれなかったらどうしよう。私は、運転手さんに聞いた。 「次の竹島駅から三ツ屋駅へ向かう電車は何分ですか?」 ここは田舎の路線で、線路が一本しかない。そのため、反対方面の電車はどこかの駅の隣り合ったホームで待機していて、両方面の電車が着き次第発車する可能性が高い。このままこの怪しい電車に乗るよりかは、一度三ツ屋駅まで戻った方がいいかもしれないと考えたのだ。 「そりゃ~、34分だべ」 腕時計は32分。反対方面の電車は、竹島駅で待っている!私は、竹島駅で降りる決心をした。  ――あれ?  時計から顔を上げると、どこかおかしい。いや、「どこか」なんてものじゃなかった。そこは、電車の中なんかじゃない――。 「お客さん、着きましたよ」 タクシーだ。しかも、「着いた」と言う場所は、山道のような、何もない場所。右側は急斜面の土の壁で、左側は崖。車一台と、降りるスペースくらいはあるといった道幅だった。  その時、古ぼけた看板が目に入った。そこに書いてあるのは「竹島駅」。  運転手さんの表情は、真っ直ぐ前を向いていて見えない。  そして私は、ここから帰る術を知らない。 「すみません、三ツ屋駅へ行ってもらってもいいですか?」
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