第一章

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「佐藤君、おはよう。」 先に来ていた佐藤君にそう言って声をかけると、佐藤君は大袈裟なくらいに肩を震わせた。 急に声をかけたのは確かだけど驚かせるつもりはなかったんだけどなぁ…。 まぁ私も今でこそ段々慣れてきたものの、唐突に声をかけられたら変な声出しちゃうし人の事は全然言えない訳だけど…。 「あ、お…おはよう! その…昨日はごめんね、変な事言って。」 そんな事を思っていたら慌てて昨日の事を謝ってきた。 「ううん、気にしないで。 あ、でも代わりって言うのは嫌かな。」 「あ、うん…。 そうだよね。」 「佐藤君には感謝してるし、ちょっとでも役に立てるなら力になりたいとは思うけど…。 でもやっぱり私は私だから。」 「本当そうだよね。 ごめん、ありがとう。」 「うん。」 「じゃあ俺達はこれからも友達だ。」 「うん、そうだね。」 これで良い。 私達は普通に友達でいた方が良い。 昨日の夜、自分なりに考えてみたのだ。 確かに役に立ちたいと言う気持ちはあるけど、私には元カノさんの代わりなんて出来ない。 だからこうして友達として関わっていく中で何か力になれる事があれば力になろうと決めたのだ。 ひとまず今日はもう一つしなくちゃいけない事がある。 「ごめんね、私ちょっと行く所があるから。」 「あ、うん。」 佐藤君に一声かけてから荷物を置き、早速藤枝さんを誘いに行く事にした。 出来るだけ早い方が良いから、誘えるなら今日にでも誘っておくようにと恵美ちゃんに言われたのだ。 その為に廊下に出ようとすると、教室のドア近くで摩耶ちゃんとすれ違う。 「おはよ。」 軽く手を上げて挨拶してくれる。 「あ、おはよ。 昨日ね、電話で話したら恵美ちゃんも会ってみたいって言ってたよ。」 「へ…へぇ、そ…そう。」 顔を赤くして分かりやすく嬉しそうにしてる。 「その…楽しみにしとく。 え、じゃあさ、もしその人が良いなら今日行く?」 「あ…うん、そうだね。 ごめん、ちょっと行く所があるから詳しい話は後でね。」 「そ、じゃあ後で。」 とりあえず元々誘うつもりだったし、今日集まれば良いよね。 そのまま摩耶ちゃんと別れ、隣の三組のクラスに向かう。 すると、ドア越しに友達と話している藤枝さんの姿が見えた。 私に気付いたらしく、廊下に出てくる。 「…どうしたの?何かあった?」 「あ、えっと…私の幼馴染の恵美ちゃんが会いたいって言ってて。 放課後どうかな?」 「あー…うん分かった。」
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