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静目線。
放課後の帰り道。
この日も摩耶ちゃんと二人で帰り道を歩いている。
「へぇ、そんな事があったんだ。」
その間に、今日あった事を摩耶ちゃんは私に話してくれた。
「中川君って同い年なのにすごく大人びてるよね。」
「…そうね。」
どうしたんだろう?
なんだか、いつもより元気がない気がする。
「大丈夫?何かあった?」
心配になって声をかけると、摩耶ちゃんは何処か寂しそうに俯く。
「私さ…小、中と学校で浮いてたんだ。
中学では小学生みたいだって馬鹿にされていじめられてた。」
「そうだったんだ…。」
実際、私もいじめられた事はある。
だからそれがいかに辛く苦しいかは分かってるつもりだ。
「だからさ…ちょっと羨ましかったのよ。
あんたにも佐藤にも、自分の事を理解して心配したり支えてくれたりする幼馴染がいるんだなって。
私にはそう言うのいなかったから。」
言われて辛くなった。
彼女はそれに一人で耐えてきたのだ。
理不尽に否定され、仲間外れにされ。
無視され、笑われ、馬鹿にされ。
そのせいで自信がなくなり、どうして生きてるのかでさえ分からなくなって。
そんな時に一人でも自分に味方をしてくれる人がいたらどんなに頼もしく感じるかを私は知ってる。
実際私も、そんな時に恵美ちゃんと言う幼なじみがいてくれなかったら今どうなっていたのか分からないし、改めて今こうして考えてみただけでゾッとする。
なら、その話を聞いて私がするべき事は一つ だ。
「…ねぇ、摩耶ちゃん。」
頼りないかもしれない。
嫌がられるかもしれない。
「何…?」
「摩耶ちゃんには私がいるよ。」
でも、そんな存在になってあげたいと思った。
「は?何それ…?」
「あ、幼馴染ではないんだけどね。」
「意味分かんない…。」
「佐藤君と中川君みたいに理解し合ってる関係ではないかもしれないけど、摩耶ちゃんは私にとって大事な友達だよ。
だからいつかはそんな風になれたら良いなって思うもん。」
「なっ…何言ってんのよ…!?」
そう問いかける顔を覗くと、分かりやすく赤くなっているのが分かった。
「あ、ごめん…嫌だったかな?」
「べ、別にそんな事言ってない!」
顔を見られて恥ずかしそうにそっぽを向く。
「…あり…がとう。」
「え?」
「なんでもない!置いてくわよ!?」
「あ、待ってよ!」
私は知ってる。
照れ屋で素直になれないところもあるけれど、ちゃんと嬉しい時には嬉しそうにしてくれる摩耶ちゃんを。
まだまだ数日間の付き合いだけど、これからもっと仲良くなっていけたら良いなぁ。
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