第二章

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「絶対ほらだろあれ…。」 席に座り、早々にぼやく。 「まぁな。」 それに隣のヤスが同意する。 「なのに熱が入っててもはやホラー…。」 「しょーもな…。」 前の席の小池さんがため息を吐きながら言ってきた。 うーん…上手い事言ったつもりだったんだがなぁ…。 バスの座席は、班で固まって座る事になり、窓側にヤス、前の席の窓側には高橋さんとその隣に小池さんが座っている。 「それにしても本当…。 熱中症にでもなったらどうしてくれるのかしら…?」 「まぁまぁ。」 ぼやく小池さんを宥める高橋さん。 ちなみに、こないだ睨み付けて来た件はあの後、まぁ…一応悪かったわよと言われてとりあえず収まった。 多分ヤスが何か言ってくれたのだろう。 実際今日もあの状態のままだったら流石に気まずくて耐えられなかった…。 それはさておき、ここで今回の登山合宿の日程を簡単に説明しておこう。 まず今乗ってるバスで目的地である桜乃木山(おうのぎさん)に向かう。 校長曰く、緩やかで初心者にも登りやすい山なのだそうだ。 現地に着いたら簡単な説明があり、その後に班でまとまってからそれぞれのペースで登山する。 山頂に着いたらそこで景色を眺めながらの昼食。 その後は来た道と反対側から下り、その先の川原でしばしの自由時間だ。 夕方になったら近くのキャンプ場で班ごとにカレーを作って食べ、キャンプファイヤーをした後に宿泊施設に泊まる。 ざっくり言うとこんな感じだ。 まぁ…俺と高橋さんは実行委員だから、それに加えて昼の弁当配りにゴミの回収、カレーの食材の準備、配り、キャンプファイヤーの支度、などなど…他にもやる事は沢山あるのだが…。 主に高橋さんが作った可愛らしいリスのデフォルメイラストが描かれた表紙のしおりを見て思わず深いため息を吐く。 「佐藤君、今日は頑張ろうね!」 そんな俺を見て、高橋さんは前の席からそう声をかけてくる。 「男のあんたがこれなのに静の方がよっぽど元気じゃない。」 と、ため息を吐きながら皮肉を言ってくるのは小池さん。 「分かってるよー…。」 それにしても本当、高橋さん変わったな。 なんと言うか、ちゃんと楽しもうとしてる。 もちろん、俺も楽しもうと言う気が全くないと言う訳じゃないけど、暑さと仕事の多さで気が滅入っているだけだ。 まぁ…実際それは高橋さんも同じな訳だが。 「ちなみに実行委員の仕事を静に全部任せっきりにしたら正拳突きをお見舞いするから。」 身長差的に丁度鳩尾に入るからそれだけは本気で勘弁願いたい。 と言うか怖くない? 見えない所から急に鳩尾狙われるとか。 と、そこで小池さんが一瞬不敵に笑った気がした。 …本当にやらないよね?
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