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3
来た道を戻ってから少し歩いた所にハンカチは落ちていた。
「良かった…。
そうだ、この辺りで汗を拭いたんだ。」
再びポケットにそれを入れ、そのまま来た道を戻ろうとすると、その近くで背を向けて道にしゃがみこんでいる美波の姿が見えた。
「…何してんの?」
俺がそう言って近付くと、ビクりと一度肩を震わせてからこちらを見てくる。
「なんで居るんよ…。」
当然だが歓迎はされてない。
向けられているのは明らかな敵意だ。
だからその言葉も質問ではなく文句と言う表現の方が正しい。
「いや…俺はちょっと探し物してただけだって…。
てか…!怪我してんじゃん!」
近付くと膝から血が出ているのが見えた。
恐らく状況から察するに足場が悪いから転けたのだろう。
「別に関係ないじゃろ…。
ほっといてよ。」
破れたジャージから見える膝は、酷く皮が剥けていてとても痛々しい。
結構酷い傷だし、強がっているのは目に見えて分かる。
それを見てショルダーバッグからペットボトルを取り出す。
「ちょっと染みるぞ?」
「え、ちょ…何しとるん!?」
ジャージのズボンを捲り上げ、その中のお茶を美波の膝の傷に少しかける。
「なんかで聞いたんだ。
お茶に含まれてるタンニンには殺菌作用があるって。」
「じゃけぇって…。」
そして、残ったお茶をさっきポケットに入れた物に染み込ませた。
「それ…!」
「あぁ、これか。」
それは、一年前の誕生日に美波から貰ったプレゼント。
青色の少し大きめなハンカチだ。
「なんでまだ持っとるんよ…?」
言いながら睨みつけてくる。
「誰かさんから貰った大事な物だからな。」
そんなのお構いなしに、そう言いながらハンカチを美波の膝に当てる。
「意味分からん…!
そんな大事な物なんじゃったら手放すな…!」
「はいはい。」
それを結び付けながら、適当な返事をする。
「大体そんな大事な物をこんな事に使うな…!」
そう言う風に言葉で拒んではいても、強く抵抗はしてこなかった。
だからそのまま手当てを進めていく。
「だからさ、その…洗って返せよな。
…よし、これでオッケーっと。
ジャージは濡れるからこのまま捲っとけよ。」
「…意味分からんし…。」
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